第80号 法政大学工学部同窓会報6/12(2010年8月10日) 印刷

第80号 法政大学工学部同窓会報を12回に渡り,毎週火曜日に公開していきます.

先生こんにちは!

「環境・エネルギー」問題解決のために!

 

理工学部 機械工学科 川上忠重教授(機85)

 

1.法政大学を教職で選んだ理由何ですか?

 非常に難しい質問ですが、一番正直なところは、「研究を継続して行いたい」だと思います。私は法政大学の機械工学科に1981年に入り、1984年から熱工学実験室(岡島研究室)に配属になり、急速圧縮装置というエンジン内の高温・高圧条件を再現できる装置を使い、メタンやプロパンなどの汎用燃料と空気の混合気の燃焼特性(筒内圧力、燃焼速度等)を調べる基礎研究を行っていました。それらの実験を通して、基礎研究の厳しさも実感しましたが、1つの条件での測定をクリアした時の達成感は今でも同じです。

2.燃焼工学にはどうして興味を持たれましたか?

 やはり、オートバイや自動車への憧れ・興味が発端だと思います。私の大学時代は自動二輪や普通免許を多くの友人達が持っており、実際にオートバイでのツーリングや車での旅行を始め、原動機関係に触れる機会は非常に多くありました。その楽しいひと時の中で、「あれ?エンジンの中では何が起こっているのだろう!」へ繋がっていったと思います。当時、内燃機関講義の飯沼先生に「エンジン内の燃焼に関する参考書」を推薦して頂き、その本を読み始めたのですが、非常に難解? で苦労したことを覚えています。

3.現在どんな研究をされていますか?

 “「炎」と「エネルギー」の未来を探究する”をテーマにしています。ガソリン機関やディーゼ機関を始めとする各種内燃機関の燃焼生成物(CO2、CO、NOxや未燃炭化水素)の低減に関する研究や、燃焼方法改善による超稀薄燃焼(通常では燃焼の継続的維持が困難な領域)での燃焼を実現するために、燃焼の能動的制御(超微粒化した液滴燃焼や微小重力環境を積極的に利用)に関する研究を行っています。また、「燃費競技会全国大会」には、自らがチームマネージャーとなり研究室の卒業研究の一環として参加し、小型ガソリン機関の燃料消費率(燃料経済性の指標)低減に関する提案を行っています。昨今の「環境」に関する世界的規模の取組みの重要性を視野に入れながら、「炎」の本質を多角的にすることにより「環境」問題の根本的な改善につながる指針を、エネルギー変換(熱エネルギー、化学エネルギー、電気エネルギー等)の観点から研究をさらに進めていきたいという熱い思いを抱いています。
 また、修士課程、博士課程の学生には、国内の学会発表会はもちろんのこと「海外での学会発表」を強く推奨しており、毎年、数名の学生が自分の研究成果を論文代表者として英語で発表しています。実験室内の研究に対する雰囲気も良く、学部生の卒業論文でも「研究成果を発表したい」との積極的な研究姿勢の学生さんも多いそうです。

4.将来のエネルギー問題はどうお考えですか?

 現在は、自然界に排出物を出さない「ゼロエミッション」や排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同僚の「カーボンニュートラル」をはじめとする環境エネルギーへの取組みが、様々な分野でなされています。「地球温暖化」や「酸性雨」等の抑制は、燃焼排出物の低減だけで実現できません。電気、燃料電池、水素、バイオ燃料等とのハイブリット型の対応を足掛かりとして、環境適応型次世代機関(内燃機関に限らず)を早急に開発し、エネルギー問題解決の一翼にしていく必要があると思います。

5.工学部同窓会事務局長も長年されていますが、苦労している点と将来への展望をお聞かせ下さい。

 工学部同窓会には、日頃から、諸先輩、教職員や在学生の方々に数多く、ご指導・ご協力頂き、この場を借りて御礼申し上げます。私自身が法政大学工学部の出身なので、「少しでも良い情報を工学部同窓会の皆さんに配信したい」という気持ちは強いのですが、組織で考えると、新しい卒業生が積極的に参画している体制は現在出来ておりません。本学も工学部から理工学部へ既に大きな改革の一歩を踏み出しております。校歌にあるように、「よき師、よき友、つどい結べり」が本学理工系卒業生全体で実現出来る場を少しでも工学部同窓会が提供出来ればと思います。

6.全学のFD推進センター長もされているということですが、法政大学のFDを少し説明して下さい。

 FDとは、Faculty Developmentの略で、一般的には「教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組みの総称」として使われています。全国の高等教育機関の90%以上で、何らかの形でFDへの取組みが既になされています。授業の進め方は、先生方により差異があるのは当然ですが、より良い授業の実現を目指して、法政大学では、「学生・職員・教員」一体で協力しながら、「学生による授業改善アンケート」や「学生の声コンクール」等により、「授業改善」関する各学部等への支援を進めています。