第80号 法政大学工学部同窓会報2/12(2010年7月13日) 印刷

第80号 法政大学工学部同窓会報を12回に渡り,毎週火曜日に公開していきます.

同窓会報80号に寄せて

 工学部同窓会報80号おめでとうございます。本同窓会報発行当初は年間数報が刊行されていたとのことですが、40年近く工学部同窓会報発行を続けられてきた伝統に感慨無量です。
 小金井キャンパスでは2008年に完成した東館の第一期工事に引き続き、2010年度完成を目指して北館(仮称)の第二期工事が進められています。昨年2月には教室棟が解体され、9月から北館の施工が始まりましたが、2010年1月末でも未だ基礎躯体工事中です。施工当初、深い穴を掘削した後に数台のブルドーザーが右へ左へと単に往復しているような時期が長く続いておりました。何を行っているのか、全く素人目には不明の作業と思われましたが、その一つ一つが意味のある作業なのでしょう。その後、周辺に鉄板の土留め壁を埋め込み、ケーブル設置の大きな穴を掘り、現在は鉄筋を非常に細かな網目状に繋いでコンクリートを流す準備をしています。最近の建築は基礎工事期間が長く、その後はあっと言う間に数階の外壁が完成し、またその後の内装工事期間が長い、と聞いています。工期の半分近くが基礎工事の期間のようです。この大変長い基礎工事の中身は、完成後の建物の表に現れないのです。 学部教育の4年間は基礎工事のようなものでしょう。専門外の人々には同じ様なことを教育しているように見えるかもしれませんが、学生の成長の過程の中でその一つ一つが意味のあることといえます。学問体系として構築された特色有る基礎課目を鉄筋の様に縦横に組み合わせて、その上に乗る重い建物を支える構造を造るには長い時間がかかるのですが、外からは見えないのです。私も、大学を卒業し会社に入社して、数年間は大学で習ったことは何も役に立たないのでは、と思ったことがありました。
 2008年中央教育審議会の答申では、大学卒業までに学生が最低限身に着けなければならない能力を「学士力」と定義し、国として具体的に示す案をまとめました。内容は「知識」「技能」「態度」「創造的思考力」の4分野13項目で、特殊な能力でなく一般的な学力といえます。「大学全入時代」の到来を控えて卒業生の質を低下させないようにする方針です。北館の建設もこれからは外見が現れる工事に移り、その後中身ともいうべき内部構造の仕上げに入ります。 2010年度に完成する小金井キャンパスの北館での教育・研究も、建物造って魂入れずにならないように常に心掛ける必要があります。


理工学部の近況

 工学部同窓会報80号の発行おめでとうございます。
 ここで、2年間の理工学部の歩みを振り返り近況をご報告致します。
 理工学部が発足し2年が経過しようとしています。4月には第一期生が3年生に進級し、ゼミに所属するなど本格的な専門教育がスタートします。
 研究面では工学部以来伝統的に非常に高いアクティビティーを変わらず維持しています。先進国からの研究者の受け入れも増え、本年度はHIF招聘研究員として米国ニュージャージ州ラトガーズ大学から女性の若手研究者を受け入れています。来年度は英国ヨーク大学から新進気鋭の若手研究者を受け入れる予定です。
 ヨーク大学とは本年度法政大学始まって以来、初めて学部間で研究・教育交流の協定を締結しました。これまで海外の大学と協定は大学間で行う必要がありましたが、より機動的な国際交流の促進を目指し学部間で協定を行うことが可能となりました。理工学部がその先陣を切ったことになります。教育面では、教育の質を高めるさまざまな取り組みを進めています。本年度、基礎科目として重要な線形数学と微積分について共通シラバスを作成しました。これまで同一科目と言えども担当教員の判断で統一の取れていなかった理工系の数学基礎科目について質の保証をめざした取り組みです。その他英語について能力別クラス編成、少人数教育で効果を上げていることは昨年ご報告した通りです。
 上級生が下級生を指導するチューター制度も引き続き実施し効果を上げています。来年度からSA制度(夏季短期海外語学研修)をスタートさせます。また、工学部時代にはなかった学生の問題発見能力を涵養するPBL、キャリア体験のためのインターンシップ(企業研修)など多くの新しい試みが来年度から実施されることとなります。これら試みを通じて新たな時代に対応出来る自立した学生を育てるべく教職員一丸となって努力を続け、着実に新学部の完成を目指したいと考えおります。