第85号 法政大学理系同窓会報を8回に渡り,毎週月曜日に公開していきます.
先生こんにちは! 非線形回路の研究 個性を大切に! 広い視野で!
電気電子工学科 電気電子工学専攻 斎藤利通教授
─ 研究テーマとその内容は何ですか?
いままで、非線形回路のカオスと分岐現象、人工ニューラルネットの学習、信号処理、パワーエレクトロニクス、群知能による最適化、等に関する様々な研究を行ってきました。ここでは、現在の研究テーマの2つを簡単に紹介します。
スパイキングニューロン:私たちの頭脳では、ものを考えたり、記憶したりするときに、スパイク信号が重要な役割を担っています。多くのスパイク信号が様々な情報を表現し、巧みに相互作用をしています。このような信号の振る舞いを参考にすれば、通信やエネルギー等の技術を担う電子回路を高機能化させることができるかもしれません。例えば、私たちが考えたとおりにパソコンを操作するロボットが作れるかもしれません(Brain-Machine Interface )。様々なスパイク信号を生成する回路を設計し、動作を解析するための独自の手法を開発しています。
群知能に基づく最適化:魚や鳥は群れを作り、互いに情報をやりとりして効率よく移動したり、餌を探したりします。このような集団の行動は柔軟で巧みであり、群知能などと言われています。群知能を参考にすると、柔軟に様々な問題に適用できる最適化手法が構築できるかもしれません。最適化手法とは、電子回路でいえば、最も効率の良い電源や、最も無駄のないメモリーを設計することに対応します。様々な問題に対応できる新しい群知能最適化アルゴリズムを開発しています。
─ 研究や教育で特に力を入れている点や工夫などをお聞かせください。
将来の最先端技術の発展に貢献できる基礎力の養成に力を入れています。現在の最先端技術は、学生たちが成長した時点で、どれだけ生き残っているかわかりません。基礎力養成のための教育は研究と一体化しています。ゼミでの教育と研究は別のものではありません。ハード実験、数値実験、理論解析に努力を重ねて研究を進めれば、当然、基礎力がつきます。
学会発表はとても重要です。十分な準備をして学会発表をすれば力がつきます。内容を数理的に正しく伝える力、予稿集を書く文章力、発表をわかりやすくする構成力、そして、生きた英語のコミュニケーション力、などです。多くの大学院生が、国内学会での10分程度の発表でデビューし、努力を重ね、審査のある国際会議で採録されています。国際会議では、世界中の個性的な若手研究者達と白熱した議論をする場を共有でき、様々な点で視野が広がります。英語での発表の準備は楽ではありませんが、自分の研究成果を世界に向けて発信し、議論を重ねることは、大きく成長していくために貴重な経験となります。
─ 理系同窓会への要望・期待をお聞かせください
学生達は、ひとつしかない自分自身の個性を大切にしていくべきです。いつまでも「共通の物差し」で物事を計っていては、柔軟で斬新な仕事をする技術者に成長できるとは思えません。彼らが、伝統ある母校の同窓会の下で互いに交わり、個性に磨きをかけてほしいと思います。