工学部が変わる、法政大学が変わる |
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―大澤泰明新工学部長に聞く― 聞き手 阿部 鞏 同窓会長
実際問題として、明確な理念がこれであるというより、「現代社会のニーズが何であるか」に応えられる大学にしていく必要があるということです。そして、大学としても健全経営をしていかなければならない。そのためには、まず結果を出すことが必要です。一般的な判断基準は「志願者数」や「偏差値」にあると思います。社会に評価されるような内容の教学改革が進めば経営基盤のしっかりした大学になる筈です。ここ数年は、結果が良かったので高く評価されてきましたが、近年では志願者も減る等状況が変わってきているので、埋没する前に考えなければなりません。これからは、工学部だけでない文理融合や女子学生をターゲットにする等の考え方も一つの方法であると思います。 2007年デザイン工学部を市ヶ谷に開設 ――そのような経緯の中で、最近の小金井キャンパスの状況と決定した工学部の改組再編についてお聞かせ下さい。 2000年4月に情報科学部が発足しました。しかし、最近は学生のIT離れ等から内容的には厳しい状況にあります。 ――教員の皆様も工学部の発展向上を願う共通認識を持っていれば、それぞれの立場での教学改革や人事の問題を併せて解決することは難しくても解決できると思いますが。 理事会では、現教員の所属を前提としない人事で考えても良いという方針を持っています。教員の問題が一番であると思いますが、学科間の壁が大きくその障害になっています。 ――将来的に理工系学部として構成される予定の学部は、現在のところ4学部と思われますが。 その通りです。しかし、学部の学科編成等にもまだ問題がありますので、決定ではないことを了解して下さい。 1.来年から市ヶ谷へ完全移転する「システムデザイン工学部」
――デザイン工学部の市ヶ谷移転で期待されることはなんでしょうか? 先ず、大学側も工学部の一部を市ヶ谷に受け入れることは、工学部にかなり期待していると思われます。既に、新聞等にも取り上げられたりしていますがかなり劇的な変革です。工学部から3割の学生が移動することになります。よく言われる「キャンパスが狭いから」ということよりも、建築・土木関係は場所を選ぶ学科ですから、今までも都心で展開することが必要であると言われ続けてきました。更に、都心回帰が進んでいる状態であることも拍車をかけております。そのため、今回の移転で志願者も増えると期待されています。理事会としても結果に注目しています。 ――工学部の一部市ヶ谷移転で大学が変わりますか? 現在の小金井キャンパスは、教員も学生も大学にいる時間が長く、施設をフルに活用して活動しています。市ヶ谷キャンパスの教員の研究室使用頻度は非常に低く、良い刺激になると思います。 校歌に「蛍集めむ 門の外濠」という一節がありますが、工学部の都市環境や建築の研究室が水の問題等を研究してお濠に蛍を呼ぶことが出来たら、昨今の環境問題、生態系の変化、都心回帰等の流れに応えられる面白い活動が出来るのではないかと思います。 ――法政だからこだわることですね。実現すれば素晴らしいことですし、注目されるとともに地域の活性化にも繋がりますので期待しております。 再開発、緑町グランドから着工 ――続いて、小金井キャンパスの再開発についてですが、基本計画は決まったのでしょうか。 1.先ず緑町キャンパスのグランド工事をスタートします。体育授業を緑町新グランドで出来るようにする。 ――緑町キャンパスには、教室や部室の建設計画はありませんか。 緑町グランドにはグランドとテニスコートのみで、建物は立てる予定はありません。近隣からの法政大学学生の評判があまり良くありません。今までバイクを放置したり、道路での歩き方が悪いことなどが影響しているようです。工学部が地域と密着して住民と一緒に歩んでこなかったため等の弊害です。多摩キャンパスでは、学校開放などで地域に根ざした活動を広げて来ています。 ――ところで、武道場がないのは小金井キャンパスくらいで、学生達にとっても、部活動にとってもあったほうが良いと思います。さらに、最近は体育授業から武道がはずされています。日本人としては入れた方が良いと思いますが。 武道場は建設される予定です。体育については、必須科目として必要性も検討する必要があるかもしれません。他の学部では体育授業がないところもあるからです。 ――多摩キャンパスの工学部棟は活用されているのでしょうか。 多摩キャンパスには、一年生が週一回で通っていますが教員も学生にとっても負担が多いので多摩キャンパスからは撤退した方が良いと思っていますが、決定されておりません。現在、多摩キャンパスの工学部校舎を有効活用するよい方法は見つかっていないのが現状です。 母校発展に卒業生の力を ――最後に、大学と卒業生との関わり方についてですが、法政の卒業生は帰属意識が薄いといわれますが。 学校側としても学生との接触の仕方を考えなくてはいけないと思います。どれだけ学生時代に先生との付き合いがあったかで、母校や教授に対して愛着が湧くし、気になります。自分の経験ですが、GWに学生を帰省させないで研究させたことがありましたが、とても親密な関係になれたものです。先ずは、法政に興味を持って貰うのが一番大切ですが、これは人の問題です。しかし、実際には文系では工学部よりももっと希薄な関係にあるのではないでしょうか。 ――大学が格付けを取得、志願者が急増、スポーツで優勝するなどの話題があると卒業生としても誇りを持てると思うのですが、COEについてはいかがでしょうか。 COEに選ばれるのはそんな簡単に出来るものではありません。選ばれるには学校間、学部間、学科間に渡った連携の下での努力が必要です。今の工学部には工学部としての一体感が求められます。研究室、学科間にまだまだ壁があり、交流を妨げているので、その壁を低くしていく努力が必要です。そうすれば、実現も可能です。 ――大学が卒業生に期待していることは何ですか。 卒業生に期待することは益々多くなってくると思います。大学がOB・OGを頼りにし、卒業生が母校を気にしてくれるようにお願いしたい。 ――工学部の改組再編は、工学部同窓会にとって大変なことです。2008年の工学部改革新年に向けて同窓会の改組再編も円滑に行わなければなりません。大学に対して貢献できる卒業生組織の確立が今後の最大課題と思っております。本日は、お忙しいところを有難うございました。
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