法政大学工学部同窓会
 
2023年3月28日(火曜日)
工学部が変わる、法政大学が変わる 印刷 Eメール

―大澤泰明新工学部長に聞く―

聞き手 阿部 鞏 同窓会長
    細淵 祐二 広報委員長


 大澤泰明新工学部長

 ――新学部長ご就任おめでとうございます。これから、工学部の教学改革に伴う改組再編、小金井再開発など近年にない大きな変革の時に工学部長になられて大変なことと思いますが、本日は宜しくお願いいたします。


 ――まず、法政大学理工系学部の理想像と理念について伺いたいのですが。

 実際問題として、明確な理念がこれであるというより、「現代社会のニーズが何であるか」に応えられる大学にしていく必要があるということです。そして、大学としても健全経営をしていかなければならない。そのためには、まず結果を出すことが必要です。一般的な判断基準は「志願者数」や「偏差値」にあると思います。社会に評価されるような内容の教学改革が進めば経営基盤のしっかりした大学になる筈です。ここ数年は、結果が良かったので高く評価されてきましたが、近年では志願者も減る等状況が変わってきているので、埋没する前に考えなければなりません。これからは、工学部だけでない文理融合や女子学生をターゲットにする等の考え方も一つの方法であると思います。
 ――近年の法政大学は、教学改革や施設整備等が推進され、雑誌等に経営革新が最も進んでいる大学として評価されています。清成前総長の就任時から法政大学の更なる発展には工学部の充実が不可欠とされてきました。10年程前からの全学的要請であった工学部の改革が遅れている訳ですが、今後どのように進めていかれるのでしょうか。
 改革は待ったなしの状態です。先ず、人事権を含めた「教学改革」を進めることが必要であると考えます。建物に関するハードウエア、改革の理念であるソフトウエア、加えて、大学組織において決定的に重要な教員スタッフ、これらを一体として考えていくことがポイントでしょう。

2007年デザイン工学部を市ヶ谷に開設

 ――そのような経緯の中で、最近の小金井キャンパスの状況と決定した工学部の改組再編についてお聞かせ下さい。

 2000年4月に情報科学部が発足しました。しかし、最近は学生のIT離れ等から内容的には厳しい状況にあります。
 本年4月に生命機能学科が発足しました。初めてのバイオを中心とした特色ある学科で非常に期待されています。現状では施設、設備等が足りない状態で学生達には迷惑をかけています。
 又、本年システムデザイン学科が小金井から市ヶ谷に移転しました。そして2007年4月には、都市環境デザイン工学科と建築学科を加えてデザイン工学部を市ヶ谷で開設する予定です。
 更に2008年4月には残った学科に関しての改組再編により、仮称ですが基盤理工学部と生命科学部を立ち上げる予定です。しかし、本年夏頃までに決定していなければ2008年にスタートすることは出来ないことになるので急務です。
 このことは、「教学優先」で進めていきたいと思っております。まず、第一に「情報」と「電子」を整理したい。これが目玉の改革になります。各学科に情報、電子などという名称が使われていて、志願者に非常に分かり辛い。組織改変も今まではボトムアップで話し合われていましたが、教員側の都合でそれを明確に整理出来なかったので、今回は、理事会主導で人事権を持った設置準備委員会を設けて進められています。志願者の目線で、学部、学科がわかり易く分けられていることが必要で志願者増員にも繋がると思っています。
 又、同じ「情報」といっても、離散数学のようなサイエンスとして考えるものと、物理をベースにしたものとでは違うと担当教授の方々は考えるためですが、志願者には理解し難いことです。
 理事会としても情報関連については、今後志願者が減っていくと見ているのでこの改革は重要であり、教員が学科のためにどのように考えるかが問題です。

 ――教員の皆様も工学部の発展向上を願う共通認識を持っていれば、それぞれの立場での教学改革や人事の問題を併せて解決することは難しくても解決できると思いますが。

 理事会では、現教員の所属を前提としない人事で考えても良いという方針を持っています。教員の問題が一番であると思いますが、学科間の壁が大きくその障害になっています。
 しかし、今まで時間がかかり、出来なかったこの改革に追い風になっている事が二つあります。
 一つ目は、教員の定年延長の時期がこの改革とぶつかること。ここ数年で退職延長の申請が増えていますがこれを良い機会と捕らえたい。
 二つ目は、理事会の考え方で、学部設置準備委員会が主導で人事を決定しても良いという事です。トップダウンで決めることが出来ることは、既存の内容を考えなくても良いという大きな違いがあります。
 何れにしても、学生の学力は10年前とは全然違う状況にあるので、レベルアップに向けて今すぐにやらなくてはならない問題が山積している状態であることは間違いありません。

 ――将来的に理工系学部として構成される予定の学部は、現在のところ4学部と思われますが。

 その通りです。しかし、学部の学科編成等にもまだ問題がありますので、決定ではないことを了解して下さい。

1.来年から市ヶ谷へ完全移転する「システムデザイン工学部」
2.基盤という単語を使うことも含めて名前の評判が良くないという意見もある「基盤理工学部」(仮称)
3.生命機能学科と他学科との再編が検討されている「生命科学部」(仮称)
4.既に設置済みですが、再編も考えられる「情報科学部」


蛍集めむ門の外濠

 ――デザイン工学部の市ヶ谷移転で期待されることはなんでしょうか?

 先ず、大学側も工学部の一部を市ヶ谷に受け入れることは、工学部にかなり期待していると思われます。既に、新聞等にも取り上げられたりしていますがかなり劇的な変革です。工学部から3割の学生が移動することになります。よく言われる「キャンパスが狭いから」ということよりも、建築・土木関係は場所を選ぶ学科ですから、今までも都心で展開することが必要であると言われ続けてきました。更に、都心回帰が進んでいる状態であることも拍車をかけております。そのため、今回の移転で志願者も増えると期待されています。理事会としても結果に注目しています。

 阿部 工学部同窓会長

熱心に工学部の未来を語られる大澤工学部長

 ――工学部の一部市ヶ谷移転で大学が変わりますか?

 現在の小金井キャンパスは、教員も学生も大学にいる時間が長く、施設をフルに活用して活動しています。市ヶ谷キャンパスの教員の研究室使用頻度は非常に低く、良い刺激になると思います。
 工学部全体が市ヶ谷への移動を期待されるように頑張って欲しいと思います。

 校歌に「蛍集めむ 門の外濠」という一節がありますが、工学部の都市環境や建築の研究室が水の問題等を研究してお濠に蛍を呼ぶことが出来たら、昨今の環境問題、生態系の変化、都心回帰等の流れに応えられる面白い活動が出来るのではないかと思います。

 ――法政だからこだわることですね。実現すれば素晴らしいことですし、注目されるとともに地域の活性化にも繋がりますので期待しております。

再開発、緑町グランドから着工

 ――続いて、小金井キャンパスの再開発についてですが、基本計画は決まったのでしょうか。
 学生達が学校に行きたくなるような施設にしたいと思っています。建設に関しては、一括で着工することは出来ませんので、設計期間や工事期間を考えて出来ることから前倒しで進めなくてはならないと思います。
 今、考えている手順は、

1.先ず緑町キャンパスのグランド工事をスタートします。体育授業を緑町新グランドで出来るようにする。
2.それから今のグランドに教室棟を建設し、部室等を解体する。南館・西館はそのまま。
3.改組再編に合わせて、今の教室棟のあとに研究室棟を建設する。

 ――緑町キャンパスには、教室や部室の建設計画はありませんか。

 緑町グランドにはグランドとテニスコートのみで、建物は立てる予定はありません。近隣からの法政大学学生の評判があまり良くありません。今までバイクを放置したり、道路での歩き方が悪いことなどが影響しているようです。工学部が地域と密着して住民と一緒に歩んでこなかったため等の弊害です。多摩キャンパスでは、学校開放などで地域に根ざした活動を広げて来ています。

 ――ところで、武道場がないのは小金井キャンパスくらいで、学生達にとっても、部活動にとってもあったほうが良いと思います。さらに、最近は体育授業から武道がはずされています。日本人としては入れた方が良いと思いますが。

 武道場は建設される予定です。体育については、必須科目として必要性も検討する必要があるかもしれません。他の学部では体育授業がないところもあるからです。

 ――多摩キャンパスの工学部棟は活用されているのでしょうか。

 多摩キャンパスには、一年生が週一回で通っていますが教員も学生にとっても負担が多いので多摩キャンパスからは撤退した方が良いと思っていますが、決定されておりません。現在、多摩キャンパスの工学部校舎を有効活用するよい方法は見つかっていないのが現状です。

母校発展に卒業生の力を

 ――最後に、大学と卒業生との関わり方についてですが、法政の卒業生は帰属意識が薄いといわれますが。

 学校側としても学生との接触の仕方を考えなくてはいけないと思います。どれだけ学生時代に先生との付き合いがあったかで、母校や教授に対して愛着が湧くし、気になります。自分の経験ですが、GWに学生を帰省させないで研究させたことがありましたが、とても親密な関係になれたものです。先ずは、法政に興味を持って貰うのが一番大切ですが、これは人の問題です。しかし、実際には文系では工学部よりももっと希薄な関係にあるのではないでしょうか。

 ――大学が格付けを取得、志願者が急増、スポーツで優勝するなどの話題があると卒業生としても誇りを持てると思うのですが、COEについてはいかがでしょうか。

 COEに選ばれるのはそんな簡単に出来るものではありません。選ばれるには学校間、学部間、学科間に渡った連携の下での努力が必要です。今の工学部には工学部としての一体感が求められます。研究室、学科間にまだまだ壁があり、交流を妨げているので、その壁を低くしていく努力が必要です。そうすれば、実現も可能です。

 ――大学が卒業生に期待していることは何ですか。

 卒業生に期待することは益々多くなってくると思います。大学がOB・OGを頼りにし、卒業生が母校を気にしてくれるようにお願いしたい。
 そのためには、同窓会も大学もOB・OGにもっと興味を持たせるようなイベントをやれば良いと考えています。
 今後とも、法政大学発展のために頑張って参りますので、同窓会にも力強いご協力をお願いします。

 ――工学部の改組再編は、工学部同窓会にとって大変なことです。2008年の工学部改革新年に向けて同窓会の改組再編も円滑に行わなければなりません。大学に対して貢献できる卒業生組織の確立が今後の最大課題と思っております。本日は、お忙しいところを有難うございました。

固い握手!「教学改革」に期待しています。
 
 対談を終えて…
 改革を進める本気さが伝わってきました。今回はもう待ったなし。志願者数もこの1、2年で減少傾向に歯止めがかからない状況ですので、とにかく早く現代のニーズに合わせ、法政大学をリーディングユニバーシティとしてリストラクチャリングしなくてはいけないと感じました。
 改革には痛みを伴います。痛みがあってはじめて改革が進む。挑戦なくして進歩なし。現代企業と全く同じであり、大学の前進をOBとして期待して止みません。
細淵 祐二(機86)

 
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