工学部長 中村 徹  法政大学工学部は1950年に発足して以来60年近く進歩を重ねて学問領域を拡張してきました。小金井キャンパスは本年度より工学部が改組され、理工学部、生命科学部が発足し、工学部、情報科学部を含めて4学部になりました。 この改組に当たり最も重要なことは、この変革期に在学する学生は素より、卒業生等諸先輩、および保護者の方々が混乱を来さないことです。ややもすれば、「小金井再開発」と「教学改革」で代表される理工系学部の制度改革の煩雑さの中で等閑に付されがちな工学部教育・研究体制の確保を図り、学生にとって工学部でのキャンパスライフが実りあるものになることが重要であると思います。すなわち、工学部学生の最後の1名にまで十分な能力を備えさせ、「自由と進歩、進取の気象」という建学精神のもと、自立した研究者・技術者として社会に貢献出来るよう指導し、送り出すことが本学教員の使命であり目的であるということです。 教育の改善は研究の向上と表裏一体の関係にあります。自由な発想とアイデアに基づいて生み出された優れた研究成果は、質の高い研究者・技術者となって教育結果に反映します。 これらの知的好奇心や興味への強い意欲に基づく、環境や偏差値だけにとらわれない、革新的な人材が輩出していることを目の当たりにされている諸先輩方も多いと思います。きちんとした学問体系に基づいた教育は、将来への理想と目標を的確に見いだせる力になっています。この研究と教育の強い関連性は「自由と進歩、進取の気象」という建学精神の上に成り立っている、と思います。 本年度、中央教育審議会は4分野13項目に渡る「学士力」、経済産業省は3能力12要素に渡る「社会人基礎力」という新たな言葉を作り、大学卒業生が身につけるべき知識や能力を具体的に示しています。一方、昨今の法政大学を取り巻く環境、とりわけ理工系学部は、大学教育に必要な理数系基礎科目を高校卒業までに履修していない学生が増加してきました。これらの学生を一定基準のレベルに引き上げる為のリメディアル教育を充実せざるを得なくなっています。 このように大学でもカリキュラムの変更や評価基準の明確化等、大きな改革が必要になってきています。これまで蓄積してきた知識・経験・環境・設備を駆使し、どのような状況であれ、本学の果たしえる教育の質的低下や機会喪失を招く事がないようにすることが必要と思っています。
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