江ノ島電鉄元取締役 代田良春(1958年建設(土木)卒) ☆プロフィールと現在のご活躍をご紹介下さい。 昭和11年(1936年) 東京都大田区生まれ 昭和33年(1958年) 法政大学工学部建設学科(土木)卒業。 江ノ島鎌倉観光(株)に入社。 大学在学中は,鉄道研究会に所属して,鉄研の仲間とは今も月に1回集まり交流を深めています。 江ノ島電鉄の生き字引き……会社引退後もボランティアを中心に,ご活躍中 今は江ノ電の紹介や鉄道模型のボランティア活動をしています。 江ノ電レトロな300型の前で(模型です)
江ノ電では工事・企画・不動産と色々な分野を担当し,平成7年江ノ電取締役鉄道部長となりました。平成11年の退職予定の年に『江ノ電開業100周年記念誌』の編集長として慰留依頼があり2年の歳月をかけ記念誌を完成させました。会社を引退したのはその後となります。 現在は,地元の『江ノ電 沿線新聞社』主催の湘南アカデミア講座の講師や『鎌倉シルバーボランティアガイド協会』で江ノ電の歴史や数々のエピソードの紹介,講演を行っています。 また,江ノ電の古い車両の本を出版,近辺の書店で写真展を開催しています。 会社の一部品や歯車でなく自分が活躍できる職場 ☆鉄道が好きで鉄道会社に就職されたとお伺いしています。JRや大手私鉄でなく「江ノ島電鉄」を選ばれた訳は……… 現在の私があるのは法政大学の恩師,江崎先生との出会いに尽きると思っています。当時,就職の相談をした際に,もともと「国鉄」出身だった先生は,大きな会社では部品や歯車のひとつとなってしまう。小さな会社で自分の力が発揮出来る様な仕事が君には向いている、とアドバイスを受けました。 たまたま,江ノ電(当時江ノ島鎌倉観光㈱)の求人があり試験を受けて入社しました。会社では,鉄道事業の他,企画・不動産関係の職種を経験し,自分の意見を言いたい放題で仕事をしてきました。意見を言うには何か裏付け………と思い「1級建築士」・「宅地建物取扱主任者」・「建築物環境衛生管理技術者」など資格取得にも力を入れました。 江ノ電を廃止……バスでいいじゃないか!! 江ノ電廃止の検討計画担当に……… ☆江ノ電の利用者が低迷し昭和40年頃大きな赤字を抱え廃止計画があったとお伺いしていますが……… 私が入社した昭和33年は急成長期で,観光事業の「江ノ島の観光用エスカレータ(エスカー)」建設を担当しました。同時期,会社として鉄道事業改革にも力を注ぎ大々的な設備投資を行いました。しかし,それが裏目に出て電車事業は大きな赤字を抱えたのです。折しも東京オリンピックに向け,江ノ島はヨットの競技場になっており道路整備がなされ,バスが鉄道のように定時運行出来る採算性の良い輸送機関となっていました。 昭和30年代後半頃には鉄道は必要ない。廃止する検討をお前がやれということになりました。鉄道好きの私としてはとても耐えられない任務で,何だ………かんだ・・・と問題点を列挙し鉄道を残すことばかり考えてました。時代が後押ししたのか,宅地の整備やビル開発,マイカー増による道路の渋滞などで鉄道利用者が増え廃止計画はうやむやになりました。 平成14年に,NHKが『特報首都圏』という番組で,江ノ電の100周年企画の取材に来たのですが,当時の廃止の危機の話しをしたところ,そのことが番組に取りあげられてしまいました。番組はかなり評判がよく2年後にも同様の取材を受けて放送されました。会社的にはかなりPR効果あったと思います。 路面電車ではない?? 規格外の鉄道だから全てが手造り ☆自慢出来るところ,苦労話などお聞かせください。 江ノ電は1898年(明治31年)に設立され,1910年全線開通しました。当時は軌道法に基づく路面電車でしたが,戦時中,横須賀〜平塚間の軍需施設のバイパスとして鉄道法による普通鉄道に変更されました。現在もそのままで唯一道路上を走る鉄道となっています。レール幅は狭軌の1067mmで江ノ電の車両はJRでも走れる車輪幅です。ただ,急カーブ最小R=28mと鉄道にはありえない部分もあるのです。 そのため,電車や路線すべてが江ノ電オリジナルで,手造りとなります。江ノ電は古いレトロな車両が魅力的な部分でもあるため,古いものを如何に存続させるかも重要なポイントと考えます。しかし,安全運行の規格や法規は変化し遵守しなければならず、いつまでも古い車両という訳には行かないのが現状です。 母校とのつながり,鉄道研究会,オレンジ会 ☆法政の現役生に何かアドバイスがあれば……… 先程もお話した通り,鉄道研究会は,今も一ヶ月毎に集まり交流を深めています。学生時代に鉄研を通じ色々な分野の方とお付き合い出来、今もなお続いているというのは私の宝物です。オレンジ会にも参加させていただいております。学生時代に横の繋がりを大切にし、一生付き合える友を数多く作って欲しいと思います。

聴き手 栄 毅熾(土69) 山川 宏明(土84)
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