法政大学工学部同窓会
 
2023年3月28日(火曜日)
先生こんにちは!日本の空でパイロットを育てる 印刷 Eメール
機械工学科 航空操縦学専修

遠藤信二教授

遠藤信二教授
東京都出身
東京都立大 数学科卒業
1970年 日本航空入社
専任地上教官・B747-400機長(他)
飛行時間:10,200時間

数学科からパイロットに?
 小学校、中学校の卒業文集ではパイロットになりたいと書いていました。ですが、大学に入った当初にはその思いは消えていました。当時は日本の各電器メーカーがコンピュータを開発しており、主力商品になりつつありました。私は、卒業後はメーカーなどに入ってプログラマーかシステムエンジニアになろうと思っていましたが、大学3年生の夏休み前に新聞の広告で日本航空がパイロットを募集していることを目にし、昔の卒業文集で書いて忘れていた将来の夢であったパイロットがふつふつと湧いて来ました。半分は外国にも行けそうだしと軽い気持ちで受験しました。結果として、小さな時からの夢がかないました。大学卒業後、日本航空自社養成訓練生として、おおよそ2年間、日本とアメリカで厳しい訓練を受けました。
 パイロットとして飛べるまでには、色々なハードルがありました。
 私が日本航空に入社した当時、最初の訓練は航空機関士(セカンド・オフィサー)になることでした。小型機パイロットの訓練を受け、国家資格のプロのパイロットとして必要な陸上多発事業用操縦士の技能証明と計器飛行をする時に必要な計器飛行証明を取得後、航空機関士としての訓練を受けました。その過程がおよそ2年半かかりました。私は最終的にDC-8という当時の大型ジェット旅客機の航空機関士になり飛び始めた後、DC-8の副操縦士(ファースト・オフィサー)になりました。その後B747-400(座席数569席)の副操縦士に移行しました。操縦士というのは機種が違えば機種毎に半年位の訓練を受けなければなりません。私もB-747の副操縦士に移行する時の訓練は半年かかりました。
 機長になるためには、副操縦士として一定の経験時間を積み、定期運送用操縦士の技能証明を取る事が必要です。その上に社内訓練が1年少し必要で合格すれば機長になれます。
 また、半年に1回社内の適性試験を受け、技術の維持が出来ているかどうかの確認があります。その他、年2回緊急時の訓練があります。
──飛行時間10,200時間。
  世界中を駆け回りましたか?
 飛行時間のほとんどが国際線です。国内線も回数が多いのですが、1回当たりに飛ぶ時間が少ないので、時間の割合で言うと国際線の方が多いです。国際線は東南アジアならおおよそ3〜7時間、ヨーロッパ、ニューヨークなら10時間以上かかりますので、10,200時間は殆ど国際線を飛行したものです。
 世界中を駆け巡ったつもりですがアフリカだけはまだ行った事がありません。
 空から見て思った事は、地図はとても正確に出来ているということです。本当に地図通りの地球です。上空から何も見ないで、地上で計測して良く正確に測れているものだと思いました。とても凄い事だと感動しました。
──パイロットとして搭乗前にしては
  いけないことなどはありますか?
 搭乗12時間前から禁酒になります。タバコは大丈夫ですが機内は禁煙です。
 また操縦していると、時には人間の生理的現象で眠くなることはありますが、その時には、立ったり歩いたり人それぞれ工夫しております。ヨーロッパ、北米等の長時間の飛行では、3人で乗り2人で操縦し、残り1人は交代で休憩を取ります。
 離着陸には気を使います。飛行機の性能をフルに発揮しなければならない離陸時には特にです。また、飛行機によっては着陸が難しい場所があります。羽田は乗り入れやすい空港ですが、昔の香港はマンションをスレスレで飛ぶ様な感じでいつも大変緊張しました。
 離陸時のスピードは重量にもよりますが、ジャンボ機でも300km/h、着陸時はおおよそ240km/hです。
──パイロットになる要素を
  教えて下さい!
 自分で時間のマネージメントが出来る事です。飛行機では離着陸までの与えられた時間が決まっています。もし、燃料が1時間しかない場合、1時間を越えることは出来ません。何か問題が生じた場合、その1時間の中で80点の仕事が出来れば良いのです。いくら100点でも1時間1分では意味がありません。そのような感覚を持っているか、いないかでパイロットとしてかなり違ってきます。それが1つの才能ではないかと考えられます。後は自分の頭で考え、判断し対処出来るかです。何かあった場合、自分しかいないので自分で考えて、判断出来るようにしておかなければなりません。そう考えると、知識は80点でも良いです。色々な事に気が付いてさらに何をやれるかが重要だと思います。

 本日はお忙しいところ
    ありがとうございました
聴き手 原田 和夫(機62)
    南埜 智子(シ08)

訓練用の飛行機:機種 単発機DA40
 
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