第91号 法政大学理系同窓会報を16回に渡り,毎日公開していきます.
4月1日付で理工学部電気電子工学科の専任教授に着任いたしました里週二です。当研究室では高電圧工学に関連した研究を行っています。発電した電気エネルギーを効率的に送電するためには電圧を高く,電流を小さくすべき,との結論は既に19世紀後期から知られています。以来,技術の許す限りの高電圧で送電を行ってきました。使われる高電圧機器は送電電圧以上の異常電圧に耐えることを確認するため,機器完成時に各種電圧波形を加え耐圧試験を行います。その波形の中で測定が最も難しいのが雷(かみなり)を模擬した雷(らい)インパルス電圧です。この波形をディジタル・レコーダで記録し,離散データから国際規格に定める手続きに従って,波形パラメータを抽出し,正しい試験電圧波形が使われていることを確認する必要があります。当研究室では波形パラメータ抽出に関するハードウェア,ソフトウェアの研究及びその国際規格(IEC 61083-1,IEC 61083-2)の設定及び改訂に関する作業を行っています。また,関連する国内規格JEC/JISの設定,改訂にも携わっています。
法政大学の一員として,大学の発展に貢献するよう努力いたす所存でございます。何卒ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
今年、東京大学大学院数理科学研究科から理工学部経営システム工学科に着任しました、寺杣友秀です。着任がしたばかりで、まだまだ未熟ですが、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
さて、着任にあたりまして、専門としています代数幾何と工学とのかかわりについてご紹介したいと思います。代数幾何は一言でいえば代数方程式で定義される図形の性質を研究する分野です。図形に座標を導入し、座標変換によって変わらない図形の不変量を研究する学問です。なかでもコホモロジー理論はグロタンディークの登場について劇的な発展をとげました。代数幾何は抽象的な学問でありますが、近年インターネット技術の発達により、社会への応用が注目されています。セッキュリティーの基礎暗号理論、情報伝達の基礎符号理論、シミュレーションの基礎乱数理論など、デジタル技術のいたるところに現代代数学の結果が用いられています。
工学部はこれらに工夫を重ね応用する使命をおっています。そこにおいて、I T技術の新しい常識、代数的センス開発の場を提供することが任務と思います。手探りの状況で始まったばかりですが、温かい目で見守っていただければ幸いです。
4月1日付で理工学部機械工学科に着任いたしました平野利幸です。専門は、流体 工学、流体機械です。
特に流体機械の代表ともいえるターボ機械は、先端材料の利用、コンピュータによる解析技術の進歩、流れのビジュアル化技術などにより小型化、高性能化が図られています。私は主にターボ機械の流れと性能に関して基礎から応用にいたる研究を行っています。研究では性能(Performance)、信頼性(Reliability)、製造可能性(Manufacturability)、テスト容易性(Testability)について多くの克服すべき課題があります。ターボ機械において、微小な流れ場における旋回失速やサージングなどの非定常現象についての詳細はほとんど知られておらず、これらを性能特性の面から明らかにする必要があります。また、研究を通じて、実際に部品を設計、製作し、コンピュータによるものづくりで効率化を目指すとともに、学術的にも常に新しい発見と現象を明らかに出来るように取り組みたいと考えております。そして、研究を通じて少しでも多くの学生が産業界で活躍できるように学生の研究教育に力を注いでいきたいと思います。微力ではありますが、機械工学科の一員として少しでも貢献できるよう努力していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
平成31年4月1日付、理工学部機械工学科に着任いたしました。
長く、操縦士養成に携わり、3月までは独立行政法人航空大学校で教頭として勤務し ておりました。
訪日外国人数は2018年に初めて3000万人を突破し、2020年は4000万人に到達するのではという勢いが続いております。それにともない、航空輸送を担う本邦操縦士の需要はこれから年間約400名に及ぶと言われます。これが所謂ボトルネックとならないように、良質なエアラインパイロットを、この法政大学からこれからも継続的に輩出していくことは大変重要だと考えております。また法政大学は操縦士資格を航空局の試験官による実地試験を受けることなく取得できる「航空従事者指定養成施設」となっており、これを引き続き維持拡充させていくことも大切です。
学生にはまず「飛べるエンジニア」としての基礎をしっかり身につけさせ、それをベースに社会が求める航空人へ巣立ってもらいたい。乗員養成は、まことに地味な知識とノウハウの積み重ねですが、航空関連の技術の革新に伴って常に教育プログラムを組みなおし最適な方法でその能力を引き出す努力が必要です。よろしくお願い致します。
第91号 法政大学理系同窓会報を16回に渡り,毎日公開していきます.
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航空操縦学専修の近況
航空操縦学専修は2008年4月機械工学科に開設され、今年で12年目を迎えました。同様のスキームを持つ他大学とはひと味違い、日本の空で飛行訓練プログラムを展開、エアラインパイロットを 含め幅広い分野で活躍できる操縦士の育成、機械の解るパイロット「飛べるエンジニア」養成の理念に基づき教育を行ってまいりました。
座学教育としては、機械科学生としての学部教育、及び航空専修としての航空関連科目(必須)を行います。飛行訓練については、1・2年次に初歩の飛行訓練であるフレッシュマンズフライト及び初等Ⅰ、3年次になると、自家用操縦士課程の履修を行い、ここまでが「飛べるエンジニア」としての必修科目です。
これ以降本人の希望により「飛べるエンジニア」としての学部授業・就職活動、更なる勉強のため大学院進学、またプロパイロットを希望する者にあっては事業操縦士課程以降に進んでいくことになります。近年は航空界の大パイロット不足もあって殆どの学生がエアラインパイロットを目指しているのが現状です。
プロパイロットになるためには自家用・事業用操縦士、及び多発限定・計器飛行証明の4つのライセンスが必要となります。学部授業で124単位を取得しながらこれら4つのライセンスを大学4年間で取得するわけですから学生は完全に二足の草鞋をはいいていることになります。
又、飛行訓練という極めて特殊な訓練を安全に効率良く実施するため法政大学飛行訓練センターが設置されています。フレッシュマンズ・初等Ⅰ、自家用及び事業用課程を行う桶川訓練所(埼玉県ホンダエアポート)、更に高度な訓練である多発・計器飛行課程を行う大分訓練所、及び増大する訓練量に対応するため今年 から岡山訓練所も新設されます。
卒業生はANA、JALを含め殆どの航空会社にパイロットとして就職しています。一期生はまもなく機長になろうとしています。また、機械の解るパイロット(いわゆる「飛べるエンジニア」)もANAの総合職を始めNCA、ピーチ、SKY等に就職、文字どおり航空界の一翼をになっています。
今後とも航空専修への一層の応援、よろしくお願いいたします。
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ホームカミングデー(2019/11/2)講演要旨
身近なセラミックス微粒子を科学する
環境応用化学科・教授(無機合成化学研究室) 石垣 隆正
セラミックス(無機固体材料)分野の発展に顕著な業績をあげた研究者に授与される日本セラミックス協会フェロー表彰を、2019年6月7日に受賞しました。気相法、液相法を用いて種々のナノ粒子セラミックスを創製してきました。特に気相プラズマ合成法で、製造プロセスの高度化により機能性発現に重要な化学組成、結晶性、生成相等を精密制御してセラミックスナノ粒子の高性能化および新機能の発現をはかり、セラミックス基礎科学の発展に貢献したことが受賞理由です。
セラミックス微粒子の合成と応用を研究テーマとする無機合成化学研究室では、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどの微粒子を水溶液中で合成し、光触媒活性、発光特性、電気・磁気特性を向上させるための研究を行っています。環境に優しい方法で高機能セラミックス微粒子材料を合成して、持続可能な環境と社会を生み出すのに貢献する人材を社会に輩出しています。
当研究室で行っているセラミックス微粒子の研究は、皆さんの身近に存在する様々な電子デバイス、光デバイスの高性能化、小型化に関係しています。代表例は、スマートフォンに使われている積層セラミックスコンデンサという部品です。この部品は、一台のスマートフォンに700 ~ 800 個使用されています。携帯電話がショルダーバッグ程度の大きさから、手のひらサイズになり、さまざまな機能を有するスマホになるには、使用されている電子部品の小型化が大きな役割を果たしました。現在使用されている原料(BaTiO3)粒子サイズを、サブミクロンサイズ(1mmの数千分の1程度の大きさ)から10分の1以下に小さくして、粒径10ナノメートル(ナノメートルは10-9 m)程度にまですると、電子デバイスのさらなる小型化、高機能化が期待されます。
セラミックス微粒子の身近な使用例をもう一つあげると、化粧品への応用があります。ファンデーションやサンスクリーンの構成素材の95%以上が無機化合物です。紫外線吸収など微粒子の機能には、素材がもっている固有の特性が関係します。一方、ファンデーションとしての特徴、隠蔽力あるいはその逆の透明性には、微粒子の形態、大きさが大いに関係しています。
微粒子合成研究の醍醐味は、化学組成が同じ材料をさまざまな大きさ、形態、結晶構造でつくることです。図は、さまざまな形態をもったZnO(酸化亜鉛)微粒子の電子顕微鏡写真です。また、最近よく聞かれるようになった光触媒の材料であるTiO2(二酸化チタン)では、異なる結晶構造をもった微粒子が合成可能です。
マイクロ流体有機ELの開発
電気電子工学科 専任講師 笠原 崇史
人々の生活を豊かにし、社会に貢献することを目標として、学際領域であるフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクスデバイスに関する研究を行っています。特に、半導体微細加工技術、印刷技術、各種分析技術を基盤として、微小電気機械システム(MEMS)と有機エレクトロニクスとを融合した「マイクロ流体有機EL」や、最先端の電気電子材料を積極的に取り入れた機能性マイクロデバイスの創出に力を入れています。 現在、有機ELパネルを搭載したスマートフォンや薄型テレビの実用化が加速しています。有機ELは厚さ100 nm程度の固体有機半導体の多層膜を2枚の電極で挟み構成され、直流電圧を印加すると有機化合物そのものが発光する「自発光型」デバイスです。バックライトが不要であることから、薄型、軽量化が可能であり、さらに高コントラストの映像を再現できるという特徴を有しています。その一方で、近年、有機溶媒を用いず、常温で液状の機能性有機材料が様々な研究分野で注目されています。発光素子としては、2009年に液体有機半導体を発光層に用いた液体有機ELが初めて報告され、液体の流動性や柔軟性を有した従来の延長線 上にないディスプレイの実現に期待が高まっています。しかしながら、従来の液体有機ELは、1種類の液体有機半導体を電極が形成された2枚のガラス基板で挟んだだけの簡易的な素子構成であり、複数の液体を精度よく塗り分け、マルチカラー発光を得るのは困難でした。我々は、液体材料の特徴を活かした革新的ディスプレイの創生を目指し、これまで化学・生化学分野で発展し、微細流路による溶液の送液・化学反応を得意とするMEMSマイクロ流体技術と、液体有機ELとを融合したマイクロ流体有機ELディスプレイを提案し、研究開発を進めてきました(図)。
本講演では以下の3テーマについて紹介します。(1) 半導体微細加工技術と異種材料接合技術による電極付きマイクロ流体デバイスの作製技術と液状ピレン誘導体の電界発光特性、(2) エネルギー移動機構を利用したマルチカラー発光、(3)液体の柔軟性を活かすフレキシブルデバイス。2018年4月に本学に着任して以来、学生とともに自由な発想で、支援ツール(CAD)を用いた新規デバイスの設計、イオンビーム工学研究所の半導体製造装置類による試作、作製したデバイスの特性評価を行っています。講演では最新の成果と今後の展望についても紹介する予定です。
本学の研究の発展ならびに教育研究を通じて学生にとってかけがえのない経験を与えられるよう誠心誠意努力いたす所存でございます。今後とも、ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
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学部長挨拶
理工学部は生命科学部と同時に2008年に創立され昨年度で10周年を迎えました。昨年度は、理系同窓会と共に10周年記念行事として法政大学理系同窓会ホームカミングデーを開催させていただきました。理系同窓会と共催という形で理工学部生命科学部創立10周年記念行事を開催させていただいたことに感謝とお礼を申し上げます。理系同窓会は、理工学部よりはるかに長い50年以上の歴史を誇っていますのでいわば先輩です。理工学部をより発展させるために、連携して活動を行うことや工学部時代の貴重な経験やご意見をいただけることは幸せなことだと思っております。
理工学部は、新しい技術革新に対応できる体制とすべく2008年4月に創立されました。旧工学部から発展的に改組し、新たな科学技術の進歩に対応したものづくり力を強化するために工学だけでなく理学的センスを融合した体制となりました。2008年度発足時は機械工学科、電気電子工学科、応用情報工学科、経営システム工学科の4学科でスタートし、2011年度に創生科学科が追加され5学科体制となりました。大学院については、2013年度には工学研究科から理工学研究科に改組され、学部と大学院への6年の一貫した教育体制が整いました。このような中、2019年度の法政大学の実受験者数が日本一になりました。法政大学としての人気が上がってきたことが分かります。法政大学全体としては前年度よりも受験者数が減少している中で、理工学部は受験者数を前年度より増やしました。このように、法政大学の人気上昇に加えて理系人気も戻りつつあるように感じます。今後、理工学部は、さらに発展するための改革の時期へと変化していくものと思います。
理系同窓会の皆様が社会において大活躍し、理工学部と連携して活動することは理工学部の更なる発展には必要不可欠と考えております。今後も理系同窓会と理工学部教員および学生の連携をさらに密にしていくことにより、理系同窓生の皆様のますますの活躍と発展を期待しています。
理工学部・生命科学部主催のホームカミングデーにあたり一言ご挨拶を申し上げます。
その前にまず、昨年開催した『法政大学理工学部・生命科学部創立10周年記念行事2018法政大学理系同窓会ホームカミングデー』には、数多くの皆様にご参集いただき盛大にお祝いできましたことを、この場をお借りし、心よりお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
さて今世紀になって、生命や環境を対象とした科学・技術の重要性が増してきており、法政大学においても、こうした時代的要請を受け、私たち生命科学部が発足した経緯があります。現在、私たち生命科学部は、生命機能学科、応用環境化学科および応用植物科学科の3学科からなり、「生命」「環境」および「物質」の三領域の有機的連関に基づいて、最新科学の知見を活用した「持続可能な地球社会の構築」に貢献できる人材の育成や研究成果の発信に努めているところです。人類が直面している様々な問題解決のための学際的学問を学び,柔軟で総合的視点を備えた実践的技術者,研究者を育成することを目標としており、そのためのカリキュラムの特徴として、初年次から専門実験・実習科目を配して専門性を高めさせるほか、自立性やプレゼンテーション能力を涵養するための科目を設定し、英語科目、教養科目、理系教養科目の単位取得を卒業要件に含めるなどの工夫をいたしております。その規模についてみると、在校生総数は900余名、教員数は40名近くに達 しております。
これまでの10年にわたる取り組みを経て、既に多くの卒業生を生命科学部から世に送り出して参りましたが、今後ともこうした卒業生たちが社会で活躍していくためには、法政大学を卒業された先輩諸氏(とりわけ理系学部卒業生)のご支援が是非必要だと考えております。卒業生は、最年長でもようやく30歳そこそこの若輩たちですが、これからの我が国を担っていく人材です。どうかよろしくご指導ご鞭撻くださいますよう、心からお願いを申し上げます。
最初のコンピュータが登場してからまだ1世紀も経っていませんが、この間に、『不思議な箱』であったコンピュータと世界中を安価に魔法のように繋ぐインターネットの拡大によって、情報技術は信じられないような発展を遂げてきました。現在、本学部の研究教育の核を担う教員の多くは、この『不思議な箱』に興味をかき立てられ、インターネットの拡大と歩調を合わせるように社会が大きく変革してくるのを目の当たりにしてきた世代です。
その一方、今の大学生にとってのコンピュータやインターネットはうまれた時から普通に身近にあり、不思議でも珍しくもないものなのです。多様な情報機器は達者に使いこなしますが、ものの仕組みに興味を持ったり、工夫したりという意識が薄くなっている面も感じています。
学部の教育ではそのような面にも配慮して、しっかりとした基礎力を固めると同時に、技術動向に興味を持つような工夫をしてはおりますが、学生の興味を拓くには社会における技術実践の現場におられる諸先輩方のご助力は欠かせません。今後とも様々な面でご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。
この4月から新たにデザイン工学部長に就任いたしました。2007年のデザイン工学部設立に対し、私は2010年から法政大学に勤めております。つまり学部設立後の着任であり、学部黎明の経験を経ていない初めての学部長ということになります。換言すれば、デザイン工学部にとっての自走期の始まりと言えるかもしれません。設立期の教授会がつくり上げた教学理念の継承と発展を任せられた重責に、日々身の引き締まる思いでおります。
デザイン工学部は、法政理系学部の中で唯一市ヶ谷に位置し、文系学部と校地を共にしております。そのような立地に加え、デザインをとおして工学的成果を社会や文化に還元するという学際的な教育を実践している学部であることからも、法政大学における文理融合教育への取り組みが期待されております。多様化が進む現代にあっては、文理融合の実現は喫緊の社会的課題であり、任期中に与えられた大きなミッションであると受け止めております。
幅広い教養を備えて社会や歴史を見つめ、工学的創造力をもって明日を描くことのできる多様な人材を輩出する学部を目指してゆく所存です。ご支援とご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。