法政大学工学部同窓会
 
2023年3月28日(火曜日)
活躍するOB紹介 工学部出身の裁判官 印刷 Eメール


東京地方裁判所 判事補
成瀬 大輔(機03)

――現在の仕事内容を教えて下さい。
 現在私は、東京地方裁判所の民事部において裁判官としての職務を行っております。昨年10月に、1年半の司法修習を終えて任官いたしました。現在の具体的な職務内容は、主に、合議事件の主任裁判官として事件を担当しています。合議事件とは、大規模であったり、事案が複雑であるなどといったことから慎重な審理が必要であることから、3人の裁判官で審理すべきと判断された事件のことをいいます。このような合議事件において、主任として記録を検討し、他の裁判官(主に裁判長)とも話し合いながら、審理の方針を決定し、また判決を起案します。なお、私は「判事補」という職位にあり、裁判官を10年間経験した「判事」と異なり、判事補は原則として一人で訴訟事件を担当することはできません。よくテレビなどで観られる法廷での3人の裁判官は、真ん中が裁判長、傍聴席から向かって左が右陪席、同じく右が左陪席という構成で、私は左陪席です。合議事件の例を挙げますと、名誉毀損事件、商品先物取引に関する事件、大規模な国家賠償事件等があります。勤務時間は厳密に決まってはいませんが、午前9時から9時半の間に登庁しており、退庁時間はまちまちですが、早くて午後9時ころ、遅ければ午前0時くらいになります。土日も裁判所又は自宅で判決起案をしていることが多いです。

――何故、工学部から司法試験を受けられたのか? 何歳の時、何度目ですか?
 そもそも私の父が弁護士であったこともあり、法曹という仕事には昔から興味がありました。ただ、自分の可能性を安易に狭めたくないとの思いから、高校(法政一高)時代、どちらかといえば得意であった理系の分野に進むことを決めました。父はそんな私に、「やりたいことをやればいい。」と言ってくれました。その後、大学に入学し、工学部機械工学科において勉強や部活に取り組んでいく中で、司法試験という日本で最難関といわれる資格試験に挑戦してみたいと考え始め、2年生の終わりころ、挑戦を決意しました。合格までは、休学や転部試験不合格等、紆余曲折ありましたが、24歳のときに、3回目の挑戦で合格いたしました。大学を卒業した年の11月でした。

――いつ頃、司法試験を受けようと考えたのですか?
 思い返せば、小学生の卒業アルバムに、未来の自分は弁護士になっているなどと書いていたような気がします。そのころは、もっぱら父の影響が大きく、本当の意味で司法試験を受けようとは考えていなかったのではないかと思います。そういう意味では、やはり、大学在学中の2年生の終わりころに司法試験への挑戦を考えたといえるのではないかと考えております。

――司法試験合格後、方向性が別れると聞いておりますが、何故今の道を選ばれたのですか?
 司法試験合格後の流れを簡単に説明いたしますと、11月に合格発表がなされて合格が決まると、翌年4月から司法修習が始まり、1年半の修習生活が始まります。これは、前期修習3か月、実務修習1年、後期修習3か月の順番で、前期及び後期修習は埼玉県和光市にある司法研修所にて、実務修習は全国各地に散らばり、裁判所、弁護士事務所、検察庁に順番に配属されて、弁護士、検察官、裁判官のそれぞれの職務を学びます。ちなみに私の実務修習地は京都でした。そして、後期修習の最後に、二回試験と呼ばれる卒業試験に合格すると、晴れて法律実務家となることができます。その中で私が裁判官を選んだ理由は、自分で最終的な判断を下せるという点にあります。もちろん、自分が判断しなければならないという重圧はありますが、その重圧の分だけやりがいのある仕事なのではないかと考えたのです。また、その判断の中身が適正なものでなければならないという厳しさも、やりがいを感じる一端となったと思います。

――今後の長期スケジュールは?
 先ほども述べたとおり、まだ一人では訴訟事件を担当できず、また能力的にもまだまだ劣っているので、名実ともに単独で訴訟事件を処理できるようになろうと思っております。先ほど、判事補は原則として一人で訴訟事件を担当できないと述べましたが、例外として、裁判官の経験が5年以上の判事補は、「特例判事補」に任命されれば単独で訴訟事件を担当できるようになります。また、判事になれば、「補」がとれて一人前となります。ですので、それらのターニングポイントを目指しつつ、実直に職務に取り組んでいこうと考えております。

――夢はなんですか?
 夢らしい夢は特に持っていないのですが、強いていうなら、やはり、一人前の法律家になることですかね。あとは、法廷でのテレビデビューです(笑)。

――先輩・後輩へ一言あれば…自由にどうぞ。
 今、訴訟はどんどん専門化しており、技術系の方々の専門的な知識を必要とする場面が多くなっています。工学の分野と法律の分野とでは中身は全然異なりますが、接点がますます増えていくものと思います。もし訴訟への協力を求められた際には、是非とも協力していただけるようお願い申し上げます。また、ご存じの方も多いと思いますが、刑事事件において裁判員制度がもうすぐ始まり、訴訟への参加もあると思いますので、その際には遠慮せずに自分の常識で判断していただきたいと思います。

 
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