法政大学工学部同窓会
 
2023年3月28日(火曜日)
先生こんにちは!八名和夫教授(電子情報学科) 印刷 Eメール

生体信号は情報の宝庫
八名和夫教授(電子情報学科)

 

研究テーマに出会うまで
―研究を志したきっかけは?
 子供時代真空管のラジオ作りに熱中したことが電子情報分野の研究者を志す原体験となっています。冬の寒い日真空管に手をかざして暖をとりながら、かすかに雑音の合間から聞こえるBBCのインターバルシグナル、ビッグベンの鐘の音に聞き入ったことが懐かしく思い出されます。
 早稲田大学理工学部に入学し学部で電気工学、大学院で情報工学を専攻しました。学部の低学年の頃、好奇心から数人の仲間とコンピュータの研究室に出入りし、ハードの論理設計の勉強をしました。教室の講義で聞いたことはすぐ忘れてしまいますが、実際に回路を組みながら仲間と独学したことは今でも良く覚えています。大学とはこういう貴重な体験をする機会を与えてくれることに存在意義があると思っています。
―どのような経緯で情報処理の研究を始められたのですか?
 コンピュータの情報処理能力は当時あまり高くなく、計算は出来てもパターン認識などの能力は人の能力にはるかに及びません。そこで人や生体の情報処理に興味を持つようになりました。東大の医者と共同で自主ゼミを毎週行い、脳波、神経パルスなど生体信号処理の研究を行い現在の研究テーマの一つの柱となっています。学位を取った後、4年間順天堂大学医学部で電気生理学の研究を行いました。神経シナップスの情報伝達に関する統計解析を行いBiophysical J.という専門誌に論文を出すことが出来ました。
―その後、法政にいらっしゃったのですね。
 そのまま医学部に勤め研究を続けることも出来ましたが、自分のバックグラウンドは工学であり、工学部で教育研究に従事したいという思いがありました。生物関係の専門誌にも論文を出し、研究の区切りがついたところで、法政大学工学部で教員の募集があることを知り応募しました。昭和59年から法政大学に勤めることとなり現在に至っています。


信号処理の応用研究
―現在はどのような研究をされていますか?
 信号処理のニーズを発掘し、新しい方法論を開発するためには、具体的な応用を多数持つことが重要です。その意味で生体信号は信号処理を適用する対象の宝庫といえます。信号処理のニーズを生体信号から得て新しい方法論を開発する。開発した方法論を一般化して、別の対象にも適用可能とする。そういった研究のサイクルが出来ます。具体的な研究テーマに目がゆきがちですが、その底流となる一般的な方法論の開発を目指しています。
 具体的な応用研究テーマとしてはインターネットバッボーントラフィックの統計モデル化、生体関係では心電図診断、心拍変動による自律神経系活動の推定などの研究を行っています。実用研究として、日産自動車と心拍変動を応用したドライバー緊張度の評価、自動車研究所と排気ガスの生体影響、建築の後藤先生、経営の鈴木先生、ロッテとの共同研究でガムの船酔い止め効果に関する研究、日本医大と突然死リスク評価などの共同研究を行ってきました。
―海外の大学との交流や学会活動も盛んに行われていますね。
 MIT、ミラノ工科大学やIEEEのEMBS (Engineering in Medicine and Biology Soc.) IFMBE (International Federation of Medical and Biological Engineering)といった学会関係者と3年毎にワークショップを企画しています。2005年には法政大学ボアソナードタワーで5th International Symposium on Biosignal Interpretationを主催しました(下写真)。また今年からInternational Journal of Bioelectromagnetism のEditor in Chief となり関係学会への奉仕も行っています。

学生気質の変化
―近頃の学生は先生の目にどのように映りますか?
 工学部の学生は真面目な学生が多くゼミに所属してから、特に大学院生は大きな研究成果を挙げる原動力となっています。大学院に進学した諸君は共同研究者として接するようにしています。
 これは特に法政大学工学部の学生ということではなく若者全般に言えることですが、勉学に関してハングリー精神が減少してきているように思います。興味のあることがあったら、教員を直接訪ねて指導を乞うくらいの意気込みを持って欲しいと思います。教員に話かけるのは敷居が高いかもしれませんが、オフィスアワーなどを気楽に利用してはどうでしょうか。
―本日はお忙しいところありがとうございました。

聞き手  原田 和夫(機械62)
柴山  純(電気93)

八名和夫教授
1951年生 神奈川県出身 博士(工学)

 
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